テーマ     いま歩育&保育を考える②~世界遺産を活かす・健康長寿を目指して~
会 期     2023年10月28日(土), 29日(日)
会 場     ほーらい館癒てぃなホール
学会長     林研二(下関リハビリテーション病院)
学会大会長   西村千尋(歩健学研究室)
大会実行委員長 長津恒輝(静岡大学)

2023年10月28日(土)、29日(日)の2日間、鹿児島県奄美群島のひとつである徳之島において第27回日本ウォーキング学会大会が開催されました。主会場は伊仙町にある徳之島交流ひろば ほーらい館で、大会テーマは「いま歩育&保育を考える2~世界遺産を活かす・健康長寿を目指して~」でした。大会に先立ち、島民を対象としたプレセミナーも開催したこともあり、学会員だけでなく、徳之島のウォーカー、養護教諭、行政職員など、オンライン参加者も含め大勢の方々にご参加頂きました。本稿では、各セッションの様子をご紹介いたします。

1) 講演・シンポジウム
 講演は、特別講演と教育講演の2つでした。
 特別講演は、西村奈美子先生(阿権浜しぜん館)による「生物多様性の島で里浜歩き」についてのお話しで、世界自然遺産の島 徳之島の自然環境とそれに寄り添って生活している島民の文化・風習について、ウォーキングも絡めながら紹介してくださいました。
教育講演は、富田寿人先生(静岡理工科大学)による「遊びからスポーツへ~子ども達への支援」で、お話しだけでなく、体を動かしながら、そして大人も童心に帰ったような楽しい時間を過ごしました。
シンポジウムは、「子宝・長寿の島の歩育実践」というテーマのもと、学齢期、青年期、成人期とライフステージごとに、徳之島の事例が紹介されました。学齢期は伊仙町立阿権小学校の元山先生、枦山先生、下釜先生の3名の先生方、青年期は天城町役場企画財政課の吉野琢哉先生、成人期は徳之島町役場介護福祉課の星野祐子先生が、それぞれの取り組みを紹介した後、座長の杉山康司先生(静岡大学)の進行で、意見交換が活発に行われ、参加者にとって今後の取り組みの参考になる内容だったと思われます。

2) 一般発表
 一般発表は、口頭発表が7演題、ポスター発表が8演題でした。今大会も研究から実践まで内容は多岐に渡り、活発な意見交換が行われました。今回は、一般発表も徳之島のみなさんに公開したところ、興味深く聞いてくださっていたようで、特にポスター発表では「これなら私もできそう」と、発表者と話をしていたとのことでした。このこともあり、今大会では、学会長、大会長による特別表彰を「徳之島特別賞」として表彰するに至りました。
各賞の受賞者は以下のとおりです。受賞された先生方には心よりお祝い申し上げます。

優秀演題賞:青木謙介先生(帯広大谷短期大学)
「就学前児における休日の歩数を用いた走力の予測」
若手奨励演題賞:中川雅智先生(聖カタリナ大学)
「幼児における時間帯別歩数の傾向と疲労症状との関連」
徳之島特別賞:仲原凪歩先生(静岡大学)
 「観光地をノルディックウォーキングで“かる~く歩く”楽しみ方の実践研究」

3) ワークショップ
 大会2日目のワークショップ①は、西村奈美子先生(阿権浜しぜん館)による「里浜歩きで筋トレ・脳トレ」で、場所は白い砂浜がきれいな喜念浜で行われました。前日の特別講演で学んでいたこともあり、時間を忘れてしまうほど夢中になったワークショップだったようです。ワークショップ②は、開催場所であるほーらい館に移動し、大会前日の27日に行われたふたつのプレセミナーのふり返りを行いました。プレセミナーは、柳本有二先生(頌栄短期大学)による「認知症の理解と予防体操」と杉山康司先生(静岡大学)による「ポールを使った運動」でした。当日の記録動画を見ながら各先生の解説があるだけでなく、実際にポールを使った運動を体験するなど、とても深掘りしたワークショップになったものと思われます。

4)全般的な振り返り
前々大会、そして前大会に引き続き、対面とオンラインによるハイブリッド型の運営となった今大会でした。昨年までの経験をもとに、長津先生をはじめとする実行委員会のメンバーがいろいろと改善策を試みながら準備を進めて参りました。一方、開催地である徳之島では、1年という準備期間ということもあり、十分なおもてなしができなかったかと思います。そのような状況の中、自然豊かな徳之島での大会が、ご参加いただいた皆様にとって「記憶に残る大会」になるよう島内外の関係者のご協力を得て、何とか大会の実現に漕ぎ着くことができました。遠隔地にもかかわらず予想を超える多数の皆様にご参加いただき心より感謝申し上げます。
今大会は、ほとんどのプログラムを徳之島在住の皆様に無料公開いたしました。研究者同士の意見交換にとどまらず、研究者と地元の方々との交流も実現しました。徳之島に訪れた方々も、徳之島に住む方々の双方にとって、有意義な時間が設けられたものと思います。この健康長寿と子宝の島「徳之島」での意見交換が、本大会にご参加いただいた皆様の今後の研究や実践のヒントになれば幸いです。これを契機に、現代を生きるすべての方々のQOLの向上、そしてウォーキングライフが豊かになることを祈るばかりです。
末筆ではございますが、ご後援いただいた伊仙町教育委員会様、天城町教育委員会様、徳之島町教育委員会様、奄美群島広域事務組合様、ご賛助いただいた奄美群島広域事務組合様、協賛いただいた株式会社フォーアシスト様に御礼申し上げます。
来年度の大会開催予定地である滋賀県でお会いしましょう。

第27回学会大会報告書 文責: 歩健学研究室 西村千尋